心理学を背景に「雑談力が上がる話し方」を読む。ちょっとしたことが大事

前書き

齋藤孝氏の「雑談力が上がる話し方」を読みました。

僕は、雑談なんて意味がない、と考えていました。でもどこかで雑談を求めていたのかもしれません。

客先常駐のシステムエンジニアの自分としては、現場が変われば人間関係の構築はほぼ一からです。そんな職業柄、どこか息苦しさを感じていたことがこの本を手にとった理由かもしれません。

この本を最後まで読み終えて、直球ですが雑談の大切さを痛感しました。

「なるほど」と思ったことが多々あり、また心理学に通じる内容が書かれいたりもして驚きもありました。

自分の気づきと解釈を、この記事では書きたいと思います。

雑談は中身が無いことに意味がある

本書の冒頭にこの言葉は書かれています。ここから驚きでした。なぜかというと、僕は常に意味のある会話をしようと思っていたから。「意味のある会話にしなければならない」「会話にオチを付けないといけない」といつも考えてしまっていました。

本書の最後の方に書かれていたのですが、人間は話すことによってストレスから開放される、という言葉がありました。そしてあとがきに、「助けてと言えず、孤独死した30代の男性」や、「我が子を虐待して命を奪ってしまう親」、「いじめにあっても誰にも相談できずに死を選ぶ子供たち」などの悲しい事件があったことを提示し、雑談というコミュニケーションの大切さが書かれていました。

このとき、こんな言葉を思い出しました。

孤独だから人間は自殺する。鬱だからではない。人生が辛いからではない。

心理学に関する本を読んでいるときこの言葉に出会いましたが、この本で書かれている雑談と繋がりがあるなと思いました。つまり、雑談とは孤独を解消する手段なのだと。さらに僕は、雑談が世界の自殺者数を減らすのではないか、とさえ考えました。あながち誤っていないと思いますし、確信に近い感覚も覚えます。

またあとがきにもうひとつ、雑談は雑草の持つ生命力のようなもの、という言葉が書かれていたのですが、孤独を解消する手段だという解釈をした自分としては、まさに雑談力は生命力だと思ったのです。



雑談は水平方向に広がっていく

議論や討論が物事を掘り下げて行くことに対し、雑談は話がずれて水平方向に広がっていくものだと書かれていました。そして、「何について話していたんだっけ?」という状態になることこそが理想であるとまで書かれていました。

これは非常に興味深く感じました。というのも、この「水平」という言葉にピンと来たのです。何かと心理学に当てはめて考えてしまう自分ですが、アドラー心理学で「横の関係」という言葉があります。相手と「縦の関係」でいては良い人間関係は築けない。「横の関係」として相手を評価することなく付き合えと。少し大げさに書きますが、何ごとにおいても、縦ではなく横の意識が、人と人の関係において大切だと考えました。

もちろん、議論や討論は必要ですし、物事を掘り下げていくことも大切です。でも、僕ら人間たちにとって、議論や討論の時間と、雑談のような意味のない会話の時間の、どちらが多いでしょうか。言うまでもなく意味のない会話でしょう。意味のない会話をすることが得意になることが、会話が得意になることであり、人と良好な関係を築けるスキルなどだと考えました。

雑談下手な人たちは自意識が邪魔になっている

雑談下手な人たちは、自意識やプライドが邪魔になっている、と書かれていました。

そしてこの後、非常に印象深い言葉が書かれていました。

ここには相手のことを考える意識が抜け落ちている

非常にしっくりきました。心理学でも、自分に意識が行ってしまうことについて警鐘を鳴らすことは多々あります。アドラー心理学で言えば、先の「縦の関係」がまずそうであるし、そして他者貢献こそが幸せだ、と言っていたりします。また、学んだことを自分だけのものにせず、公開していくことが自己成長につながる、と言っている本もあります。(樺沢紫苑氏の「OUTPUT大全」など)

雑談も同じ。つまり、雑談も他者と関わるということにおいて同じであるため、人のことを考えるという意識が大切である、と僕は理解しました。

悪口や陰口は避けるべき

またひとつ心理学と共通することをこの本の中で見つけることができました。ネガティブなことは極力避けるべきであると言っている人は多いですが、この雑談について書かれた本も同様でした。僕もネガティブには非常に否定的です。

というのも、この「悪口や陰口は避けるべき」という言葉から、私生活で心当たりのある場面が思い返されたからです。

飲み会に誘われることがあるのですが、誘われることは非常に嬉しいです。でも、なんとなく後味悪く帰宅することが多く感じていました。過去の飲み会を思い返してみると、飲み会では会社の上司や同僚の悪い点を洗い出して指摘したり、驚くほどネガティブな話が多い。そんなネガティブな話ほど盛り上がってしまったりするものなのですが、やはりそんな飲み会は後味が悪いものです。

雑談とは後味良く終わること、という言葉もこの本に書かれていましたが、やはりネガティブなことは良いことを生み出さないと、あらためて認識しました。

雑談力が上がる話し方30秒でうちとける会話のルール【電子書籍】[ 齋藤孝 ]

価格:1,265円
(2019/10/20 19:09時点)
感想(2件)

フリスク

この本の中で一番単純明快で、でも実用的だと感じたのが「フリスク」です。

フリスクは、そうあのミントのフリスクです。

言わんとしていることは、フリスク(ピンキーでもよし)を持っていると、「おひとつどうですか?」といった会話のきっかけがつかめて、雑談に発展していく可能性があるということ。
そして断られても、「ミントは嫌いなんですか?」と言ったような話から、雑談が成り立つ可能性もある。

実に単純明快。これは面白いなと思いました。というのも、やってみることが簡単だからです。

実際、きっかけがつかめなくてその場の空気に息苦しさを感じることがほとんどです。場の空気をなごませることが雑談の意味である、と書いてある本書から学ぶこととして、素直に「やってみよう」と思いました。




あとがき

自分は雑談が下手だと思っており、それがこの本を手にとった理由です。

でも、雑談のことだけでなく、今まで手にとった自己啓発の本から目にしたことのある言葉が多数書かれており、いろいろな共通点が見えてきて面白く感じました。

いろいろな自己啓発の本を読んで思うのが、相手に共感することの大切さです。

相手に共感できるからこそ良い人間関係が築け、相手に共感できるからこそ相手にも自分を理解してもらえる。他者貢献が幸福、という言葉がアドラー心理学にありますが、非常に的を射ていると感じました。

ここまでお読みいただきありがとうございました。この本を手にとってくれる人たちが増えてくれると嬉しいです。