「天才」の田中角栄の生き様から学ぶこと。政治家の生き様

前書き

石原慎太郎の「天才」を読んだ。

政治家 田中角栄の人生を、一人称で書いた小説だ。

僕は正直、政治には疎いのであるが、この本から得たことを素直に書きたいと思う。

人生を形づくるものは人との出会い

この本の最後に、「長い後書き」なるものが存在するが、その中で石原慎太郎氏が人生を形づくるものについて書いていた。

人間の人生を形づくるものはなんと言っても他者との出会いに他ならないと思う。

さらに、「結婚や不倫を含めて、私の人生は思えば素晴らしい他者との出会いに形づくられてきたものだった」と書いている。

また、本書の本文中においては、田中角栄の言葉として、以下の言葉が書かれていた。

誰かを選ぶときに必要なのは、所詮、人触りの問題なのだ。
身近な冠婚葬祭には腐心して手を尽くしてきた。何よりも人間にとってたった一度の死に際する葬式のときには、精一杯の義理を尽くしてきた。

この「人との出会いを大切にする」という姿勢は、本書から読み取れる田中角栄と石原慎太郎の共通点としてだけでなく、見習うべき人生への接し方として、僕は深く感慨を受けた。

直感

前述の「人生を形づくるものは人との出会い」とも内容が重なるが、田中角栄は直感を大切に生きた人物だと思う。直感を大切にしなければ、「誰かを選ぶときは所詮人触りの問題なのだ」という言葉は出てこないだろう。そしてそこから生まれる行動力が、彼に偉業を成し遂げさせたのだと僕は想像する。

偉業とはなんだ、と思われるかもしれないので、僕が田中角栄はすごいな、と思った瞬間をお伝えしたいと思う。

彼が国会対策委員で、国対の会議なるものに出席していた頃の話で、新しい法案について議員たちと議論するとき、「あんたら土方をやって汗水たらしてトロッコを押したことがありますかね」と開き直り、彼自身の過去や最底辺の経験を披瀝して持説をいいたて、土方の経験の無い奴らは到底太刀打ちできなかった、という描写があった。

人間味溢れると言うか人情があるというか、とにかく人の温かさなるものを僕は感じた。

そして、彼は常に最低の立場に置かれているだろう国民の立場を考えてものを言っていたという。

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権力はただの水

もうひとつ印象に残った言葉で、以下の言葉があった。

権力というのは所詮水みたいなものなのだ。この掌で沢山確かに掬ったと思っても、詮のない話で、指と指の間から呆気なく、零れて消えていくものなのだな。

これは本書の中で、田中角栄から人が徐々に去っていく状況のときに、彼の心理描写として書かれていた。

権力は水のようなものだ、という考え方というか、ものの見方と言うか、この概念は現社会においても、心理学的な観点から考えて大切なものの見方だ、と僕は思った。

つまり、権力が背景にあるような、人との関係が縦の関係であっては、所詮それは水のようなものだ、と僕は感じた。

この「縦の関係」というのはアドラー心理学から引用した言葉であるが、所詮縦の関係というのは、いずれは崩れ去っていくものなのだと、感じたわけだ。

この田中角栄の言葉から得た気づきと教訓は、人と横の関係を築くことこそが、強い絆につながるものだと思った。

そしてこの横の関係は、本書の「長い後書き」に書かれている、田中角栄と石原慎太郎の会話からも、読み取ることできた。

あとがき

一端のサラリーマンである自分が、ブログというテクノロジーの産物を使用して、一流の作家でありもと政治家の書籍について語っていると生意気に思われるかも知れないが、率直な感想は、人間の生き様からは学べることが計り知れない、ということだ。

この記事を読んでくれている読者に、田中角栄の生き様が少しでも伝わったら幸いである。