哲学を武器にしよう。「武器になる哲学」を読んで

はじめに

「哲学」という言葉を聞いて何を思い浮かべるでしょうか。”古い”とか”難しい”とか、または”専門的”というような言葉を思い浮かべると思います。

「武器になる哲学」という本を読んだのですが、この本を読んで僕は「哲学」というものをとても身近に感じることができました。

この記事では、「武器になる哲学」の読書後の感想を書きたいと思います。

 

(今や)誤っている哲学もある

まず、本書の特徴を話したいと思います。どのような書き方をしているのか。

そもそも、哲学というものについてですが、難しいと思っている人が多いのではないでしょうか。自分もそうです。今でもそう。難しい用語が並んでいたり、回りくどい表現があったりしますから。

本書を書いた山口周氏は、哲学の初学者が挫折する理由として、以下のように書いています。

哲学者の残したアウトプットを短兵急に学ぼうとするものの、アウトプットがあまりにも陳腐であったり誤っていたりするために「学ぶ意味」を実感できないから

ここの「誤っていたり」と書いていることろに注目です。

この本では、エライ学者さんたちの言葉を今の時代と照らし合わせて、間違っているときは間違っているとバッサリ切り捨てているのです。

哲学の歴史は長いため、古い哲学者が言っていることが今の時代の価値観にそぐわなかったり、また誤っていたりすることがあるということを言っています。

こういう風にハッキリ言ってくれると説得力がありますよね。

過去の偉人たちの言葉を、やたらと「スゴイ、スゴイ」と持ち上げているような本とは全然違います。

しかし、エライ学者さんたちの言ってることをバッサリ切り捨てるだけではなく、別の観点からみれば有用な考え方となる、と説明しているんです。

ここがイイ。これが「武器になる哲学」という本の魅力だと思います。

つまり、今となっては間違っていることはハッキリと間違っていると言い、でもちょっと違う考え方で見ればイイこともあるじゃん、って言ってるんです。

 



少数の人たちと深い結びつき

本書の中で50人の哲学者の言葉をピックアップして、今の時代に合わせた有用な考え方について説明しています。

その中でマズローの言葉が紹介されています。

マズローは難しい哲学の中でも名前を知っている人が多いのではないでしょうか。「マズローの5段階の欲求」が有名ですよね。

ここでは「マズローの5段階欲求」の話はしません。マズローが言った、「自己実現を成し遂げた人に共通する15の特徴」の中から、1つピックアップしてお伝えしたいと思います。

マズローは自己実現を成し遂げた人の対人関係として、特徴を以下のように表現しています。

心が広く深い対人関係をもっている。少数の人たちと、特別に深い結びつきをもっている。これは、自己実現的に非常に親密であるためには、かなりの時間を必要とするからである。

この言葉の中で、「少数の人たちと、特別に深い結びつきをもっている」という言葉が印象的です。

いろいろなビジネス書でも書かれていますが、慣れ合うことはよくないです。

誰も自分のことを否定しない環境というのは居心地がいいとは思いますが、自分に足りないところに気づけず自己成長できません。

「コンフォートゾーンから抜ける」という言葉も使われますね。

人間は居心地のいい空間にいては成長できません。自らの意思で外の世界に出て、問題にぶち当たってその問題を一生懸命解決しようとするからこそ、成長できます。

人類の歴史もそうです。村の中にいては狩りはできません。

ずっと村の中に立てられた的(まと)を狙って弓を射ていたのではうまくなりません。実際に猛獣と戦って命を懸けて弓を射た人間がいたからこそ、人類は発展できたのです。

いつも同じ仲間と一緒にいる人たちは要注意だと思います。

 

悪魔の代弁者

悪魔の代弁者とは、本書にも書かれていますが、多数派に対して、あえて批判や反論をする人のことです。

これも本書で注意書きがされていましたが、悪魔の代弁者は天邪鬼な人のことではなく、より物事を深く掘り下げていくため、あえて反対的な立場を負う人のことです。

悪魔の代弁者についてはここでは触れませんが、ここから派生する話として、本書で信頼できる人間になるための示唆が書かれていました。

まずジョン・スチュアート・ミルの言葉を一部引用します。

その人の判断がほんとうに信頼できる場合、その人はどうやってそのようになれたのだろうか。それは、自分の意見や行動にたいする批判を、つねに虚心にうけとめてきたからである。

われわれ人間は、人に批判されるとついつい感情的になってしまうことがあります。

そして、批判してきた人を何とか丸め込もうと、強行手段に出ることもあるかもしれません。

でも別の視点から見ると、相手の批判というのは自分が持っていない考え、という風にとらえることができると思います。(自分と違う視点を持っているから相手は批判してくる)

批判してくる人と真っ向から対峙するのではなく、ミルの言うように「虚心にうけとめ」ていくことができれば、自分に足りない部分を得ていくことができるかもしれませんし、そして良い人間関係を築いていくことの助けになるかもしれません。

しかし一言だけ断っておくと、日本の社会はまだまだ年功序列だったり「上司の言うことは絶対」というような無駄な価値観が根強く残っています。

ブラック企業にいたことがある自分からすると、なんでもかんでも相手の批判を受け止めていたら神経がもちません。

なので、相手が危険な人間ではないことを見極める、という考え方は絶対に意識しておきたいです。

高圧的で言葉のキャッチボールが成り立たないようなブラック企業の上司の批判などは、虚心に受け止めても意味ない可能性は大いにあります。理由はそんな上司は上司でもなんでもなく、ただ「自分の利益しか考えていない人間」ですから。

相手と言葉のキャッチボールをして、批判されたらその言葉をいったん受け止めて、そして自分の意見をさらにブラッシュアップするということは、とても大切だと感じます。

 



あとがき

さていかがだったでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございます。

本書は哲学書でありながら、「難しすぎない本」でした。でもやっぱり哲学って難しいなと感じます。

しかしここまで哲学をかみ砕いて説明してくれる本はなかなかないと思いますし、一読の価値はあると思います。

気になった方はぜひ読んでみてください。