前書き
「嫌われる勇気」という本を読んだ。アドラー心理学をわかりやすく解説した本である。
言わずと知れた180万部超えのベストセラーだ。
この本を読んで気付かされたこと、心に留めておきたいことを書いておこうと思う。
このような自己啓発の本を読むとき、そのようなアイデアもあるのか、という気づきを得たいと思っていることが多い。
しかしこの本は、考え方の根本を示した本であり、いい意味で人間の弱い部分を突いていると感じた。
他の心理学からは学べない気づきもあったように思う。
そして何より、心理学でありながらわかりやすく、そしてシンプルでありながら大胆な本であった。
原因論と結果論
一般の心理学は原因論である。過去にあった出来事から、今の心理の状態を紐解いていく。
しかしアドラーの心理学は違う。
アドラーの心理学は目的論である。
目的論とは原因を考慮せず、これから自分がどうなりたいか、というところに焦点を当てる考え方のこと。
でも過去は変えられず、変えられるのは未来だけという言葉はよく耳にする。
僕はまずここで、今の心理学が原因論に基づいたものが多いことを知り、そこに大きく驚いた。
つまり、変えられるのは未来だけという言葉をよく耳にするが、心理学では過去にあった出来事に目を向ける。
世の中でよく言われる言葉と、心理学が逆の方向を向いていたからだ。
率直に不思議だと感じた。
これからどうなりたいか、与えられたものをどう使うかと考える心理学が、実に新鮮であった。
そして原因論よりもシンプルであり実用的で、わかりやすいものだとも感じた。
ここからアドラーの心理学として、「今を生きること。人生は線ではなく、点がつながった刹那的なものだ」という考え方へ発展していく。
「今を生きる」という言葉は新鮮ではなかったが、目的論から入っていく、「今を生きる」という言葉へのアプローチが新鮮であった。
勇気の心理学
アドラーの心理学は「勇気の心理学」であるという。
この勇気を語る上で、以下のような言葉が書かれていた。
「幸福とは他者への貢献である」
「自由とは他者から嫌われることである」
他者から嫌われることを恐れず、行動していくこと。そして人間の幸福とは、他者へ貢献し、その共同体(会社やコミュニティ)の中で、自分が有益であると感じること、と自分は理解した。
なぜ「勇気の心理学」と呼ばれるのか理由がわかった気がする。
この2行を同時に行うのは、かなりの勇気が必要となるだろう。
さらに驚いたのは、いや、この本を読んで一番印象に残った言葉は、以下の言葉である。
「誰かが始めなければならない。他者が非協力的であっても、あなたが始めるべきだ」
先に書いた2行の言葉が語られる中、上記の一節が書かれていた。
実に力強い言葉だ。
心理学の本を読んで、このようなストレートな言葉に遭遇するとは思っていもいなかった。
心理学というには、実に痛快な言葉であるとも感じた。
一般の心理学が、考え方のヒントを与えるようなテクニックの心理学だとすれば、アドラーの心理学は実に能動的で、まさに勇気の心理学だと思った。
そしてこの言葉は、考え方のヒントではなく、明らかにどのように行動すべきか、という行動指針を示しており、目先の行動ではなく、行動そのものの土台の精神を表現している。
でもこの行動指針で日々生きることができれば、それは実に能動的で、まさに自分の人生を生きる、ということにつながるのではないかと僕は思った。
横の関係・自分の人生を生きる
横の関係とは、他者との間に優劣をつけない考え方だ。この言葉も実にわかりやすかった。
しかし単純な上下関係の話ではなかった。
他者を評価しないということだけにとどまらず、他者の課題に介入せず、自分の課題にも介入させないと書かれている。
ここから発展して、「他者の期待を満たすために生きることは他者の人生を生きることになり、他者にも嘘をつくことになる」と書かれており、そして、アドラー心理学では、「承認欲求を否定する」というのだ。
この言葉を読んで、自分の行動にハッとしてしまった。
他人を褒めてしまっている自分に気づいたし、相手の期待に答えようとして体調を崩した過去も思い出した。
そして、そんな自分に違和感を感じていたことも思い出した。
違和感を感じながらも、相手の人生を生きてしまっていた、自分の嘘に気がついた。
自分の行動を変えるのは難しい。無意識にやってしまっていることならなおさらである。
この言葉で、自分の嘘に気づいただけでなく、実際に行動に移せると願いたい。
少なくとも、自分への戒めとなったことは確かだ。
さらにこの言葉は客観的に見て、非常にレジリエンス(ストレス耐性)を高めるために有益な言葉であると感じた。
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え [ 岸見一郎 ] 価格:1,650円 |
あとがき
アドラー心理学は、心理学というカテゴリの中でも、新しいアプローチをしていると感じた。
「心理学を学んでも、実際にどのような行動をすればよいのかわからない」と感じている人には特におすすめできる一冊である。
また、心理学を今まで学んできた方々にも、新しい気付きを得られる一冊であると思うので、まだ読んでいない方はぜひ手にとっていただきたい。