FACTFULLNESS – 事実を見つめることの大切さを学ぶ

はじめに

ファクトフルネス。事実に基づいた判断を行うこと。この本の著者ハンス・ロスリング氏の言葉だ。

ハンス氏は今はもう亡くなってしまっている。実際は、この本が完成する前に亡くなられたのことだ。

この「ファクトフルネス」という本が完成されて出版できたのは、ハンス氏の息子夫妻が手伝っていたからなのだという。

ハンス・ロスリング氏は言う。世界の人々は、世の中が悪くなり続けている思い込みを持っているのだという。こういう自分もその一人だった。

気温は上がり続けていると思っていたし、人口も増え続けていると思っていた。貧困は減っていないと思っていたし、格差は広がり続けていると思っていた。

しかし事実を見れば、そんなことはなく、世の中は良くなっているということがこの本が伝えたいことだ。

ファクトフルネスから得た気づきを、本記事に書きとめたいと思う。

メディアは悪いことを報道して視聴率を稼ぐ

悲観的な報道や、悪いニュースの方が耳に残りやすいことは誰もが経験のあることだと思う。

ファクトフルネスからの言葉で言うと、「ドラマチックな本能」が人間には備わっており、悪いニュースの方が感情を揺さぶるため、興味が向きやすいのだという。

そのため、視聴率を稼ぐことが目的の報道では、悪いニュースが流れやすい。そして結果として、悪いニュースが我々に届きやすくなっている。

そのため、世の中の人々は世の中はどんどん悪くなっていると思ってしまっているのだ。

ハンス氏は言う。

悪いニュースが目や耳に入ってきたときには、統計を見よう、と。

統計を見て、全体像を把握し、その全体に対して報道されていることがどれほどの大きさを持っているのかを。

統計を見れば、事実が見えてくる。




犯人捜し本能

何か悪いことが起きたとき、誰かのせいにしたくなってしまう本能のこと、と書かれていた。

ハンス氏の実体験も書かれていた。

僕自身、人のせいにしやすいひねくれた性格だったためか(今は歳を取って少しやわらいだけど)、この犯人捜し本能という言葉は頭に残った。

頭に来たり、怒りに目がくらんだりすることが人間だれしもあると思うけど、これもある意味犯人捜し本能のなせる業と言えると思う。

冷静になってからあらためて起きた事実を見つめてみると、誰も悪くなく、自分自身の不注意が原因だったり、自分の能力不足が根本的な問題だったりする。

ファクトフルネスでは「事実を正確に見る」ために、この犯人捜し本能というものを認識しようと言っているだけだ。ハンス氏が伝えたいことはそれだけだ。

でも、この本能を認識することは、自己成長にもつながると思った。

なぜなら人のせいにばかりしていては自分を高めることはできないと思うし、ひとりの人間として自立することが、自己を高める第一歩になると思うし、自立は事実を正確に見ることに絶対必要なものだと思うからだ。

謙虚であること

なによりも、謙虚さと好奇心を持つことを子供たちに教えよう。

ハンス氏の言葉だ。本書から引用させてもらった。

ハンス氏はこうも言う。

「堂々と知りません、と言うことだ。」

謙虚になることで、正確に情報を見ることができるようになるという。冷静に考えてみればわかる。

わかったつもりになっていては、入ってくる情報を否定することが多くなってしまうと思う。

自分が正しいと思っていては、間違いにも気づけない。そしてその間違いを自分の中で訂正することもできず、ずっと間違った認識のまま生きていくことになってしまう。

ハンス氏の「子供たちに教えよう」という言葉は、美しい言葉だと思う。

どれだけ長く生きようと、謙虚な気持ちを忘れていない大人は、物知りでなんでもできる人(そんな人はいないと思うけど)よりも美しく見えるものだ。

繰り返しだが、ファクトフルネスで伝えたいことは、謙虚な姿勢が事実を正確に見ることに必要だ、ということだ。

でも僕はそれ以上の感想を持った。

謙虚な姿勢は事実を正確に見ることを助け、そして自己成長を止めないためにも必要な姿勢だと思う。

あとがき

ファクトフルネスという本は、特殊な本だと思った。

事実を述べている本であるし、事実を正確に見るためのハウツー本という側面もあると思うし、そして書かれていることから、一般のビジネス書に書かれている自己啓発の知恵も得ることができると思う。

事実を伝えることや事実を正確に見ることに焦点を当ててはいるけれど、ハンス氏の体験談だったり、失敗談だったり、物語がところどころに挿入されていて、とても楽しく読むことができた。

世界を正しく理解するために、ぜひ読んでみてはいかがだろうか。