はじめに
どのようにしてイノベーションは起きてきたのか。
どのような人のどのようなマインドからイノベーションが生まれたのか。
この「ZERO to ONE」という本には、イノベーションが発生するときの条件や状況、そして考え方が書かれている。
起業を考えている人もそうでない人も、新しいことを始めようとしている人もそうでない人も、本書「ZERO to ONE」から多くのことを学べる。何より読んでいて楽しかった。
本書の中から印象に残った言葉を引用させていただき、それに対する僕自身の経験や考えを書きたいと思う。
人間はみな投資家である
誰にとってもべき乗則は大切だ−なぜなら、世の中のすべての人は投資家だからだ。投資家にとっての最大の投資はスタートアップにつぎ込む時間だ。
(中有)
すべての人は投資家にならざるをえない。君が仕事を選ぶとしたら、それが数十年後に価値あるものになると信じて選ぶはずだ。
ZERO to ONE
僕は起業をしたことはない。会社員として雇われの身で働いたことしかない。
自分がやっている仕事(プロジェクト)が、数十年後の未来に影響を与えるものなのか、ということは考えたことがなかった。
でも、何も考えずに働いていたわけではない。
こんなことをいつも考えていた。
「エンジニアとして数十年後も、手に職をつけて働くことができているだろうか?」
僕もいちおう、投資家的な思考能力はあったのだと思う。
システムエンジニア(以後SE)として働いてきたが、駆け出しのころは運用保守のプロジェクトばかりに従事させられ、この頃は「いつか設計や構築のプロジェクトに携わってやる」と思っていた。
設計や構築のプロジェクトに携わったあとは、「今後はクラウドがメインになってくるから、オンプレの経験だけでは食っていけない」と考えるようになった。
SES(客先常駐エンジニア)として働いていた頃はいつも、「SESだと裁量権がほぼ無いから、プロジェクトを作る側の正社員にならないと未来はない」と考えていた。
SESを辞めてSierの正社員となることができても、満足できなかった。理由は、同じ目標(思想)を持った人間と一緒に働くことができなかったからだ。このときも、このままではヤバいと思った。
今は、「技術力が高い社員がたくさんいる会社」、「自社サービスを持っている会社」、「(完璧は実現できないけれど)同じ目標に向かって(ある程度)同じ意識を持って社員が働いている会社」を求めて転職活動をしている。
一緒に働きたいと思える人と働く
僕の事務所の弁護士たちは価値あるビジネスを行っていたし、一人ひとりが並外れて優秀だった。一方で、お互いの関係は不思議と希薄だった。一日中同じ場所で過ごしているのに、事務所から一歩出るとほとんど話すこともないようだった。好きでもない相手とどうして一緒に働いているんだろう?
(中略)
でも、案件ごとに働く人間が入れ替わり、単なる仕事だけの関係しか持てない職場は、冷たいなんてもんじゃない。それに、合理的でもない。時間はいちばん大切な資産なのに、ずっと一緒にいたいと思えない人たちのためにそれを使うのはおかしい。
(中略)
投資に値しないということだ。
(中略)
僕たちは一緒に働くことを心から楽しんでくれる人たちを雇うことにした。才能はもちろん必要だけれど、それよりも、ほかでもない僕たちと働くことを働くことに興奮してくれる人を採用した。
ZERO to ONE
Sierに就職したとき、同僚との意識に大きな差を感じて、退職を決意した。
Sier企業は僕のことを、「僕たちと働くことに興奮してくれる人を採用した」わけではなかったようだ。もちろん、僕自身が入社する企業を見誤ったというのが一番の原因なのだけれど。
Sier企業の同僚たちには、テクノロジーに対しての尊敬が感じられなかった。
上司がこんなことを僕に言った。
「AWSの技術力なんてどうにでもなると思ってる。(AWSのサービスは)頻繁にアップデートするしね」
この言葉を聞いたとき、退職を決断した。
僕は世の中のテクノロジーに対して、そしてそのテクノロジーを作った人に対して、尊敬の念をいつも持つようにしている。
最近はAWSというパブリッククラウドを使うことが一番多いけれど、AWSのテクノロジーを作った人たちを尊敬している。顔も名前も知らないけど、尊敬している。
Amazon以外の企業は、AWSという他社が創造した技術を使ってシステムを構築しているにすぎない。
それなのに、「AWSの技術力なんてどうにでもなると思っている。頻繁にアップデートするしね」とはどういうことだろうか。
正直、僕は上司の神経を疑った。テクノロジーに対しての敬意がまったく感じられなかったからだ。
一緒に働く仲間選びは最重要だと僕は思っている。
今、僕は転職活動をしている。面接中は相手の人柄や性格を見抜こうと必死だ。
内定が目的じゃない。一緒に働く(であろう)人間を知ることが目的だと考えている。
もちろん内定が出なければ意味は無いのだけれど、一緒に働く仲間を意識せずして転職することは無意味に思える。
安泰と思ったら終わり
本当に安泰なのは、人生安泰と思わない人だけだ。
ZERO to ONE
「人生安泰だ」と思った瞬間に成長は止まると思う。
僕は70歳になっても働いていたいと思っている。そして死ぬまで、成長し続けていきたいと思っている。
本書でも触れられていたが、有名大学を出たエリートが有名企業に就職して、「もう自分の人生は大丈夫だ」と思う時代は終わったと思う。
労働者が守られすぎている日本でさえ、大量リストラが始まっている。
希望退職を募る企業もどんどん増えている。
高い地位を得て座っているだけで給料がもらえる時代はもう終わった。
考えてみてほしい。
一生お金に困らずハワイでずっと過ごしていたいだろうか?
僕はゴメンだ。
お金に困っても、成長し続けてチャレンジし続けることができるところで働きたい。