「創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち」から小島秀夫という人間をより知る

前書き

ゲームデザイナーの小島秀夫氏が書いたエッセイである「創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち」。

小島秀夫氏が影響を受けた小説や映画を、文章を通して伝えてくれる。

GENE(遺伝子)では後世に伝えられないMEME、しかも小島氏が厳選したMEMEを本書では感じることができる。

進化生物学者のリチャード・ドーキンスが提唱した概念である。生物学的なGENE(遺伝子)とは異なり、文化や習慣や価値観などを次世代に継承していく情報のことことだ。

創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち

小島秀夫氏のことは知っていました。小島監督と呼ぶほうがしっくりくるかな。もちろん知人ではありません。

僕はメタルギアソリッドシリーズの大ファンで、若い頃は寝る間も惜しんでプレイしてた。

プレステ1のメタルギアソリッドが初めてプレイしたメタルギアです。こちらはゲームキューブでリメイクされ、こちらもプレイした。

当時は「ゲームは悪いもの」として捉えられていたと思います。ちょっと前まで「スマホ」が悪いものとして捉えられていたように。

そう考えると、ゲームクリエイターが影響力を持ち、本を出すようになるなんて考えられなかった。

でも小島監督が作る作品は他のゲームとは違っていた。

物語がすごい。

もうこの一言に尽きる。

ゲームなのに映画を観ているような感覚。そしてその映画ならぬゲームの主人公となって仮想世界で戦うあの興奮。

没入感がすごい。

このような素晴らしいストーリーを作り上げることができた理由が、この本を読んで理解できた気がする。

小説や映画というフィクションを愛し、それを作った創作者に対して敬意を払う。

僕の体の70%は映画でできている

小島秀夫

小島監督がTwitterのプロフィールに堂々とこれを書く理由も、本書を読んで理解できた気がする。

小島監督にとっての出会いとその意味

世界中に、本や映画や音楽は無数にある。それらを全て体験するのは、到底無理だ。だから、自分が死ぬまでに、どんなものと出会えるか、というのが僕の人生において、重要な意味を持っている。

創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち

小島監督は本書でこのように語っている。また小島監督は毎日のように本屋に行くそうだ。

物語を愛していることがひしひしと伝わってくる。

どんな本であっても、たとえそれがつまらなかったとしても、その本と共に過ごした記憶は自分だけの記憶であり、自分にとっての特別な物語なのだ。

創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち

この言葉にも感銘を受けた。

僕も本は読む。ビジネス書が多いため、知っていることが書いてあることはざらにある。

たとえ知っていることが書いてあった本であっても、その本から得られる知識は絶対にあると思っている。いや、あると思いながら読んでいると言ってもいいだろう。

だから僕も小島監督と同じように、本を読んだことを記憶に残しておきたいと思っている。だからこのような読書ブログをやっているのかもしれない。

自立とは

自立とは目標をもって自ら歩き出すことなのだ。

創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち

僕はビジネス書を読むことが多いため、「自立」という言葉にはよく遭遇したことがある。

思い出す限り、下に列挙する本には書いてあったと記憶する。

  • いつやるか? 今でしょ!(林 修)
  • 1億稼ぐ子どもの育て方(午堂 登紀雄)
  • ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく(堀江 貴文)

小島監督にとっての「自立」の定義を(これだけではないだろうけど)知ることができてよかった。

人によって「自立」の定義はかなり異なる。

「親から離れて暮らすこと」、「自分で稼いで生活できるようになること」、いろいろある。

小島監督の言う「目標をもって歩き出すこと」。これは現代の若者が抱く問題を鋭く突いている気がする。

何をやっていいかわからない。

何をやっても楽しくない。

そんなことを言う若者が増えている。自分もかつてはそうだったと思う。目的も目標もなく、ただフリーターをやっていた。

全く興味はなかったけれど、なんとかしなくてはという考えだけで、高額なプログラミングスクールに入会した。

大金を搾り取られたことは後悔しているが、今システムエンジニアとしてそれなりに働けているので、苦い過去であるが良い経験だったとも思っている。

僕の当時の目標は、とりあえず正社員になること、だった。

何をしていいかわからなかったが、とりあえず目標を掲げることはできていたわけだ。

そして今の自分がいる。正社員として働けている。

小島監督の言う「自立」の定義に、僕は賛同することができる。

ゲームの在り方

わたしは25年前、ゲームに不必要だと云われていた「物語」と「メッセージ」を加味した。しかし、その志向はソーシャルゲームの勃興と共に消えつつある。「ゲームは暇つぶしでいい。カルチャーにはならない」、それが「時代」が下した結論であるかもしれない。

創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち

ゲームデザイナー小島秀夫の本を読むのだから、ゲームデザイナー小島秀夫がゲームをどのように考えているのか一番知りたかった。

この言葉を読むことができてよかった。

想像はしていた。若い頃メタルギアソリッドをプレイしていた頃に感じていた。

やはり小島監督は、ゲームに対して独自の考え方を持っていた。

本記事の冒頭にも書いたが、メタルギアソリッドは物語がすごい。深すぎるほど深い。そして予想がつなかい。

そんなメタルギアソリッドのようなゲームを僕は求めていた。

小島監督は、「ゲームは暇つぶしでいいというのが時代が下した結論なのかもしれない」といっている。

確かにそうかも知れない。でも僕は違う。

ゲームであっても、物語を楽しみたい。その物語の登場人物となり、その仮想空間で生きる感覚を味わいたい。

だから僕は一人のゲーマーとして、小島監督を応援したい。

ゲームも映画や小説と同じと僕は考えている。ひとつの文化だと思っている。