「LIFESPAN – 老いなき世界」を読んで。人生の質を上げる長寿遺伝研究

前書き

「LIFESPAN – 老いなき世界」という本を読みました。

本書は科学者が書いた本であり、特に最初の方は専門用語も飛び交うため、非常に読みにくい(ムズカシイ)本でした。

しかし読み進めるうちに、科学のことだけではなく、人がいかにして人生の質を上げていけるかといったように、自分たちの日々の生活に深く切り込んで、さらに具体策なども書かれており、本の世界に引き込まれました。

本書を書いたデビッド・A・シンクレア博士は、彼の祖母の晩年がとても苦しい状態(ろくに動けない、等)を見て、悲しみに暮れたそうです。

92歳まで生きたそうですが、彼女の晩年の人生をシンクレア博士は以下のように語っています。

祖母は92歳で人生に幕を下ろした。世間の基準からすれば、長く良き人生をまっとうしたことになるのだろう。しかし、考えれば考えるほど、本当の祖母はとっくの昔に死んでいたとしか思えなくなった。

引用元:LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界

晩年は見るもつらい日々を送り、「仕方がない、こういうものなんだ」とつぶやいた。だが、本当の意味での祖母らしい祖母はとうの昔に死んでいた。

引用元:LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界

シンクレア博士は言います。

私が思うに、健康な状態なしに生だけを引き延ばそうとするのは、断じて許しがたい罪である。この点は重要だ。寿命を延ばせても、同じくらい健康寿命を長くできないのなら意味がない。前者を目指すのなら、後者も実現するのが私たちの道義的な責務である。

引用元:LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界

本書は、長寿(寿命が延びること。寿命を延ばすこと)に関して、様々な観点から多様な見解が書かれています。

寿命を延ばす研究の過程も書かれているし、寿命が延びた場合の社会保障や働くことの意義なども書かれています。

また前述したように、ただ寿命を延ばすだけでは(例えば延命装置につないで生かしておく)、本当の意味で寿命が延びたわけではなく、健康に生きてこそ人生であると説いています。

そしてこの切り口から、高齢になっても生きがいをもって働くことの大切さまで書かれています。

単純に長寿の可能性を説いた科学書ではなく、”どのように”生きることが大切なのか、といったメッセージが込められた本です。

長寿関連遺伝子

本書の最初の方に書かれていた生物学の話なのですが、興味深かったのでここにも書いておきたいと思います。(僕は学者ではないのでかなり簡素化して書いています)

生物の進化の歴史の中で、遺伝子が危機的状況にあるときは生殖活動を止めて、遺伝子の修復活動に専念するようになる、という進化があったそうです。

生物は生殖(細胞分裂)を成功させなければ後世に自分を遺せません。

気候変動や外傷などの色んな外的要因(今では交通ルールを守らない車からも身を守らなければなりません)で生殖ができなくなってしまいます。

そこで生命には、危険にさらされているときは生殖活動を抑制する遺伝子が現れ、それによって後世に自分を遺せる確率が上がりました。

この”危険な時に生殖活動を抑制する”遺伝子のひとつに、サーチュインがあります。シンクレア博士が研究対象としているもののひとつだそうです。

サーチュインだけが長寿関連遺伝子ではなく、ほかにはmTOR(エムトア)などがあるそうです。

この、「危険な状況では生殖を止めて修復活動をする」ということだけでも頭に入れて本書を読めば、最初からあまり混乱せずに済むと思います。

過度なストレスが長寿遺伝子を働かせる

この長寿関連遺伝子は今の僕ら人間にも受け継がれて備わっています。

遺伝子は危機的状況にならなければ修復活動をしないので、危機的状況が無ければ修復活動が行われないことになります。

この長寿関連遺伝子を働かせることの重要性が、本書には書かれています。

わかりやすいのが「糖尿病」です。

糖尿病は、常に血糖値が高い状態になっているため、インスリン(血糖値を下げる物質)が出なくなることです。

これは遺伝子の修復活動と似ています。

つまり、危機的状況を検知しなかったため、修復を行うインスリンが出なくなったわけです。

本書では糖尿病の恐ろしさや、糖尿病の患者の話(かかとに釘が刺さっているのに気づかなかった)も書かれており、今現代のなんでも手に入る時代に生きていることが、ある意味、危険な状況であることに気づかされました。

具体的なアクションプランも書かれており、例えば、動物性たんぱく質(牛肉や豚肉)よりも植物性たんぱく質(大豆など)の方が身体にいいことが書かれています。

ここでは超簡素化して書いていますが、動物性たんぱく質が身体に及ぼす影響なども、科学者の視点から詳しく書かれています。

注目したいのは、ストレスが身体によい、と考えることができることです。

僕らは、「たくさん食べて元気になろう」なんて言葉を聞きながら成長しますが、必ずしもそれが正しいとは限らないということです。

もちろん、成長期にはちゃんとした食事をとることは必要だと思います。

しかし、年齢を重ねた後も同じ考え方を持って生きることは危険だと思いました。

シンクレア博士は、ときには食事を抜くそうです。

お分かりかと思いますが、DNAの修復活動を起こさせるためです。

食べることが健康には直結しないということに(可能性は否定できないですがかなりの高確率で)気づかされました。

本書を読んだ後、僕はおなかが空いていても、無理には食べないようにすることにしました。

空腹では働けませんから節度は重要ですが、少なくとも、空腹でいることが害ではないという認識を得ることができました。

高齢になっても働くことの意義

最後に気づきとして記しておきたいことは、高齢者の労働のことです。

高齢になっても、健康に生き続けるための方法や理論を説明している本書ですが、それに関連して、高齢になっても働くことの意義が書かれています。

心に残った言葉を、2つ引用させていただたいと思います。

定年退職する人がいなければ、若い労働者が仕事から「締め出される」のではないか。そう心配する人は大勢いる。私は違う。国家が停滞するのは、仕事が足りないからではない。新しい発想を取り入れたり、人的資本を活用したりするのを怠るからである。定年年齢の低い国でGDPが少ないのはそのためだ。

引用元:LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界

(社会保障)制度を維持するための答えは、人々を無理やり長く働かせることではなく、働きたい者が働くのを許すことである。元気なまま数十年間長く仕事をし、それに伴う給与と敬意とメリットを得ることができるなら、そうしたいと願う人は大勢いる。しかも、意味ある仕事を通して、人生の目的を見出すことができるのならなおのことだ。

引用元:LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界

長く働きたいと考える僕にとって、この言葉は心に響きました。

僕はまだ定年の年齢ではありませんが、日本ではなにかと高齢者を会社から締め出そうとしていると感じています。

肩たたき」なんて言葉もありますよね。

でもそれは間違っていると思います。

シンクレア博士も書いているように、新しい発想を取り入れないからこそ、高齢労働者を締め出す風潮があるのだと思います。

年齢に差があっても一緒に働く仲間である。

世代を超えて価値観を共有する。

上は僕の言葉ですが、人々が気持ちよく長く働くためにも、古い価値観は捨てるべきだと思います。

シリコンバレーで働く酒井潤さんもYouTubeで仰っていましたが、普通に70代のエンジニアがバリバリ働いているそうです。

プログラミング(コード)もガンガン書くそうです。

シリコンバレーは一流の企業が名を連ねるビジネスの土地。

日本は今のままで、定年になったら早めに退職してね、みたいな考え方でよいのでしょうか。

少なくとも僕は、もし定年の年齢になって会社から「締め出された」ら、日本という場所にこだわらず、自分の今までのスキルが活かせる場所を探して、働き続けると思います。

あとがき

最後までお読みいただきありがとうございました。

「LIFESPAN – 老いなき世界」の魅力が伝わったら幸いです。

また、より多くの方が本書を手に取って読んでいただき、新しい価値観の発見や今現在の長寿の研究に触れていただけたら嬉しいです。

最後に言わせてください。

年齢の差なんて気にせず、価値観を共有して歩み寄り、長く元気に働いていきましょう。